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書籍レビュー:英語の神様

『英語の神様』は、「英語学習に疲れたあなたへ」というキャッチフレーズの通り、英語の勉強に追われていつの間にか身体や心に溜まってしまった毒を、デトックスしてくれる物語です。

しばしば突拍子もない展開になるので、ストーリとしての現実味がいささか欠落しているところもありますが、ただ、主人公が直面するさまざまな体験を通じて、英語学習に関するいくつかの気づきや指針を得ることができるでしょう。

主人公の池尻成貴は、東京に本社のある某健康器具メーカーに勤める会社員ですが、入社して8年目、徳島支社に赴任中のある日、勤め先が突然アメリカの通信販売会社に買収されてしまいます。

アメリカ人幹部が本社から次々に送り込まれ、社内に英語がどっと押し寄せる中、アトランタ出身のダニエル・グラッドウェルが販売促進部長として直属の上司になります。

成貴は必死に英語の勉強に励みますが、どんどん上達していく仲間とは対照的に、自分だけがリスニングに四苦八苦して、焦燥感と孤独感が募っていきます。

しかも、それまで仕事ができないと思っていた後輩の甲崎丈が実は帰国子女で、水を得た魚のようにたちまち優位になる一方、成貴は英語が分かるふりをして何とかその場をやり過ごしているうちに、ダニエルとの関係もギクシャクし始めてしまいました。

そして、神経をすり減らした挙句、英語を聞くだけで気分が悪くなり、過呼吸の症状まで出る始末で、ある朝ついに出勤することができなくなります。

成貴は心療内科で鬱病と診断され、クビになるのを覚悟で会社に診断書を提出したところ、思いがけず3か月の休職が許可されることになりました。

そんな折、インターネットで「インドの寺院に英語の神様がいる」という書き込みを偶然目にします。

「どんなに英語のできない人も、神様にかかれば、英語の達人になれる」という誘い文句を見て、どうせこんなものは眉唾物マユツバモノだろうと思いつつも、このまま仕事に戻ったとしても状況が悪化するだけなので、成貴は一縷イチルの望みをかけてインドへ渡ることを決意します。
こうして、異国の地で思わぬハプニングに遭遇しながらも、成貴はやっとのことで目的の寺院に辿り着きます。

しかし、境内のどこを探しても、英語の神様は一向に見つかりません。

すると、ひとり途方に暮れている成貴の目前に、アンドリューという不思議なシンガポール人が現れます。

彼は、英語の神様を知っている、自分が出す課題をクリアしたら英語の神様に会わせてくれると言うので、成貴は半信半疑のまま、彼に出された課題を期限までにこなそうと必死に努力します。

アンドリューが成貴に出した課題一覧:

  1. 洋書のエロ本を多読する。
  2. チャンツのCDを聞いて、音楽に合った振付を考えて踊る。
  3. 10日間で1000語程度の文章2本を1000回音読する。
  4. 超早口で英語を話す幼児の世話をする。

その後の展開はネタバレになるので書けませんが、アンドリューの課題を完遂して一皮むけた成貴が、帰国後仕事に復帰し、販売不振を受けて会議で執拗にまくしたてるダニエルに向かって「ここは日本だ!日本人には特有の人付き合いのやり方があるのだ」「日本で数字を上げたければ日本を学ぶべきだ。文化、風習、感情。日本語も」と英語で喝破カッパしたシーンは本当に気持ちがスッキリとしました。

本書が示唆する勉強法は、英語の勉強に疲れた読者にとっては特別目新しいものではないかもしれませんが、興味のある分野の英文をたくさん読むこと、英語のリズムや音に耳を慣らすこと、口の筋肉を鍛えて頭に例文を染み込ませることは、語学習得の基本であるということを改めて気づかせてくれます。

そして、主人公が悪戦苦闘しながら成長していく姿を通じて、英語はあくまでもコミュニケーションの道具であり、それゆえに、ネイティブスピーカーの前でも決して卑屈になることなく、自分の専門性と仕事のスキルを磨くことが何よりも大切であるという真実を悟ることができたなら、あなたのデトックスは完了です。








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