couch potato(カウチポテト)の意味と使い方|英語も死語?スラングや読み方
couch potato(カウチポテト)という単語を聞いたことがありますか?
これはテレビの前でゴロゴロして過ごす、引きこもりのようなライフスタイルを揶揄(やゆ)した言葉。
1970年代のアメリカで俗語として生まれ、1980年代には日本でも新聞などの各メディアでさかんに紹介されたため、世代によっては「カウチポテト族」という言葉を覚えている人もいるかもしれません。
日本語としてはすっかり使われる機会が減り、死語になったと主張する人もいて、残念ながら若い世代には通じない可能性が高い言葉。しかし、英単語としては派生語も存在し、今でも使われる機会はあるので、知識として覚えておくといいでしょう。
近年では、jakubi(ジャクビ)がヒットさせた楽曲の歌詞にも登場しています。若い世代でこの単語を知っているとしたら、こうしたヒップホップ経由でしょうか。
※ジャクビはオーストラリア出身の5人組バンドで、ポップ界の鬼才として注目のアーティスト。洋楽好きの人はぜひチェックを!
というわけで今回はcouch potatoの意味や語源を探っていきます。テレビ全盛期に生まれた言葉ですが、ネット全盛期の現代にも通じるものがあり、興味深いはず。それでは、いってみましょう!
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couch potatoの意味と語源
couch(カウチ=長いす、ソファー)にゴロリと寝そべって、テレビばかり見ている人の姿はまるで potato(ジャガイモ)のよう、ということで、1970年代当時のテレビ漬けで怠惰な生活様式を皮肉って生まれたのがcouch potatoです。
語源については諸説あり、後で関連語で紹介するveg out(ベジアウト:vegはvegetableの略で、完全に野菜化する→のんびりくつろぐ、の意味がある)の野菜つながり説や、boob tuber(おバカなテレビ好きさん)のtuberにジャガイモの意味があったからとする説が有力です。
いずれにせよ、ダジャレ感覚で生まれたcouch potatoですが、当時の若者のテレビ漬け生活をうまく言い表していたこともあって、全米に広がり、日本にも紹介されるようになります。
日本におけるcouch potato
日本では1980年代から90年代にかけて、欧米式生活の象徴として注目され、広まりました。当初は単にカウチポテト族と訳されて紹介されたようですが、広まるうちに、もとの英語ではただのポテトだった部分が、なぜかポテトチップスを食べることと勘違いされていきます。※現在でも、この言葉を知る日本人の多くはポテトチップスを連想するようですが、本来の英語の意味にはポテトチップスは含まれません。
すなわち「ソファーの上でごろごろしながらポテトチップスを食べ映画やテレビを楽しむ」現代アメリカ的な生活として受け入れられたようです。さらに興味深いのは、そうした生活を憧れと捉えた風潮まであったこと。確かに、大きなソファーを独り占めしてテレビを見るなんて、当時の日本人からしたら贅沢の象徴だったかもしれませんね。
現在のcouch potato
90年代に入ると、アメリカも日本も急速にパソコンが普及し、さらに2000年代以降は若者の興味の対象はテレビよりインターネットに移っていきます。それに伴ってcouch potatoが使われる機会は減り、日本ではカタカナ語として広く定着するには至りませんでした。ただし英語としてはmouse potato、ACP(意味は記事後半で紹介します)といった派生語がいくつか生まれ、couch potato自体も現在でも通じる表現として残っています。
こうして見てみると、1つの言葉にも時代や人々の生活が大きく反映されているのがわかり、実に興味深いと思いませんか?語学学習において、その言葉が生まれた背景まで考察してみることは、その言語圏の歴史や文化の理解にもつながるため、効果的な学習方法になります。
couch potatoの用法
英会話でのcouch potatoは、ややスラング寄りではあるものの、普通に使うことができます。couch potatoを使った例文をいくつか紹介しておきましょう。
あいつは本当に怠け者だ。
He is such a couch potato.
ごろごろしないでよ!
Don’t be a couch potato.
この三日間、ずっと家でごろごろしてたわ。
I’ve been a couch potato for the last three days.
週末は家でテレビでもみてのんびり過ごすつもりさ。
I’m going to be a couch potato this weekend.
couch potatoにはやや侮蔑的なニュアンスも含まれているので、人に向けて使うときは注意が必要です。下の2つの例文のように、自分に用いることは問題なく、自虐的に使う場合もあれば、のんびりとリラックスするというポジティブな意味で使うこともできます。
couch potatoの類義語・関連語
couch potatoの派生語・類義語・関連語を紹介しておきましょう。
1つの単語を深く理解したついでに関連表現を覚えると、記憶に残りやすいのでおすすめですよ!
veg out
veg out(ベジアウト)はcouch potatoの語源として有力な表現です。vegはvegetableの略で、直訳すると「完全に野菜化する」となりますが、実際は「すっかりくつろいでのんびり過ごす」という意味。couch potatoと違う点は、テレビやソファ、もちろんジャンクフードなどとも結びつかず、怠けるというニュアンスより、単にリラックスするイメージに近づきます。
今日はただ家でゆっくり過ごしたい。
I wanna just veg out at home today.
the boob tube
boobは愚か者に対する侮蔑語、tubeはブラウン管、すなわちテレビを意味し、直訳すると「おバカなテレビ」。つまり軽薄なテレビ番組を批判する意味で使われる単語です。couch potatoよりも前からあった単語とされ、語尾を変えてthe boob tuber(おバカなテレビっ子ちゃん)とした場合のtuberがジャガイモを意味することから、couch potatoの語源という説も存在します。
今晩テレビで何の番組やってるか知ってる?
Do you know what’s on the boob tube tonight?
mouse potato
mouse potato(マウスポテト)は、couch potatoの派生語です。mouseはパソコンの操作に使うマウスのことです。パソコンの前でジャガイモのように動かない人を表しています。ネットとパソコンの時代になり、熱中する対象がテレビからパソコンに変わったというわけですね!
昨晩はオンラインゲームを10時間もやったって?君は本当にマウスポテトだね!
Did you play online games for 10 hours last night? You’re such a mouse potato!
active couch potato
こちらもcouch potatoの派生語です。普段はcouch potatoでも、週末などには運動もする人を指しています。どの程度activeかは人によりますが、couch potatoなのにactiveだなんて、ちょっとユーモラスな響きですね。これにはなんと、ACPという略語まで存在するのです!
知ってるだろ?俺はアクティブカウチポテトなんだぜ。
You know, I’m an ACP.
homebody
couch potatoが持つ、家にひきこもっているイメージに近い単語も紹介しておきます。まずはhomebody。homebodyは自宅で過ごすのを好む出不精の人というイメージではcouch potatoに近いのですが、家庭的でマイホームの時間を大切にする人という、プラスの意味でも使われます。
マイホーム主義者
a homebody
antisocial
antisocialも自宅に引きこもっているイメージの単語ですが、単に社交的でない人、不愛想な人の意味で使われたり、反社会的な悪人の意味で使われたりもするので、couch potatoの代わりとしてピッタリというわけではありません。
社交的でない人
an antisocial
NEET
NEETは、Not in Education, Employment, or Training(学校に通わず、働きもせず、職業訓練も受けていない人)の頭文字とされ、通例大文字で書かれます。もともとはイギリスで提唱された用語で、労働統計などでは世界的に使われています。日本語としてはカタカナ語のニートとして広く認知されていますが、英語としてはそれほど日常的な単語ではありません。
日本語で使うとしても、差別や見下しのイメージが強いせいか、近年では特に人に向けて使われる機会は減っています。
※なお、NEETはneat(こぎれいな、しっかりした)と同音です。
まとめ
いかがでしたか?couch potatoは1970年代以降のアメリカ人のライフスタイルを象徴するような単語で、かつては日本にも紹介されるほどであったにもかかわらず、時代の変化でカタカナ語として広くは定着しなかったという、少し変わった経歴を持っています。
さらに、その意味が日本人には微妙に変化して受け入れられた点でも、おもしろい単語だと言えるでしょう。英単語としては現在も使われ、楽曲の歌詞に登場したり、派生語が生まれていたりしますので、英語の流行語の1つとして覚えておいて損はありません。
また、記事後半で紹介した派生語や関連語など、近い表現をあわせて覚えて単語の知識を増やすことが英語学習のコツです。英語ぷらすの記事には例文や関連語の紹介が多いので、気になる記事をどんどんチェックして英語力アップに役立ててくださいね!