日本人の英語のスキルが低いのにはわけがある!

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近年、日本人の英語能力が低いと言われています。
日本人は一般的に勤勉で知能も高く学校教育で長い期間英語を勉強しているにも関わらず実際には簡単な会話すら聞き取れなかったり話せなかったり…それが一般的な日本人の英語スキルの現状です。

インターネットが普及して「Skype」などのツールで海外のネイティブスピーカーから安くレッスンを受けることができるようになりました。

このように日本人が英語のスキルを向上させる機会は増えていますが、どうして日本人の英語のスキルは低いままなのでしょうか?
前半では、世界における日本人の英語力の現状と、「発音」「文法」「語彙」という語学学習の主要な3要素学習方法について紹介します。

そして、後半では、どうして私たちは英語学習に時として挫折してしまうのか、その原因について考えてみたいと思います。

英語スキルが低い日本人現状と、英語上達に必要な要素

「イー・エフ・エデュケーション・ファースト・ジャパン」というグローバル教育機関は、毎年、世界各国の被験者のデータに基づいて作成される国別英語能力指数「EF EPI」というものを発表しています。

2015年「EF EPI」では、日本は世界70カ国の中30位で、「標準」という評価でした。

それが、2016年72カ国中35位、2017年80カ国中37位と年々順位は下がり、評価も「低い」とされました。

以下、報告書からの引用です。

「韓国、シンガポール、日本、香港の教育制度 は、OECDの国際学習到達度調査 (PISA) での学生のスコアが高いため、模範として度々取り上げられています。

(中略)

しかしながら、これらの4か国の中で高いレベルで英語を指導しているのはシンガポールだけです。

(中略)

韓国、日本、香港における英語教育は、実践的なコミュニケーションよりも文法ルールに重きを置いたことで伸び悩んでいます。
真の英語能力の向上を実現させたければ、会話練習を増やし、文法や語彙よりもコミュニケーションスキルを優先させた効果的な教育制度に方向転換しなければなりません。」

(2017年度「EF EPI」報告書より)

この分析は、よく言われている日本人の英語スキルの低さと、その英語教育の現状をまさに表しています。

それでは、この現状を少しでも抜け出し、私たちの英語力を総合的に向上させていくにはどうしたらいいのでしょうか?

今回は、英語の学習を「発音」「文法」「語彙」という3つのカテゴリーに分類して、学習方法を紹介します。
日本の英語学習において重点があまり置かれていない「発音」の学習をメインに、「文法」「語彙」についても触れながら、英語の学習法について考えていきましょう。

日本人の英語スキルを向上させるにはなぜ「発音」が重要なのか

私たち日本人は、子供の頃から長年、膨大な時間とお金を費やして英語を勉強しているはずなのに、どうして英語のスキルが低いと言われるのでしょうか?
そして、そもそも外国語を学習するというのはどういうことなのでしょうか?

ニュージーランドの心理学者・言語学者、クリス・ロンズデールTED講演(各界で先進的な業績をあげた人々が行う講演)「どんな外国語でも半年でマスターしてしまう方法」の中でこう述べています。

「外国語の学習というのは知識の蓄積とは違います。外国語学習はむしろ肉体的トレーニングに近いのです。私たちの頭にはフィルターがあって、なじみのある音だけを通し、なじみのない音は通さないのです。聞き取れるようになるには、肉体的トレーニングです。話すという行為は筋肉を使います。顔には43の筋肉があり、それらを連動させて使うことで、他の人が理解できる音声を作り出します。」

明らかに知識を蓄えることではない、と断言しています。
話すという行為は、特に顔の筋肉を使うことであり、これにはトレーニングが必要だとも言っています。

私たち人間は、外部から何らかの音を聞くと、その音は、言語を聞いて理解するはたらきを担うウェルニッケ野(運動性言語中枢)に送られます。
「言葉」なのか「雑音」なのかここでは判断できないため、さらにブローカ野(知覚性言語中枢)へと送られます。

そして、ブローカ野は言葉を話す際に筋肉を司るはたらきをもつ部位であり、ここで過去に話したことがある音は「言葉」として認識するのです。
つまり、筋肉を使って実際に話したことがある言葉は聞き取ることができるし、話したことがない言葉は聞き取ることができないということなのです。

私たちが、書き言葉で読んで理解できるような簡単な英語でも、実際に耳で聞くとネイティブスピーカーの話すことがまるでわからないという現象は、ここに原因がありそうですね。

そのため、「発音」について学ぶこと、そして実際に「発音」するトレーニングを行うことが、外国語学習では最も重要なのです。

“The Linguistic Genius of Babies”
(Patricia Kuhl)

https://www.ted.com/talks/patricia_kuhl_the_linguistic_genius_of_babies?language=ja

この講演によると、生まれて間もない赤ちゃんが、両親や周囲の人たちに話しかけられて、新しい言語を習得するのに高い能力を発揮するのは7歳までで、それ以降は急速にその能力は低下するそうです。
この間に赤ちゃんは、お母さんなど周囲の声や音をたくさん「聞く」ことで言語の習得を始めます。

つまり、まず「読む」「書く」ということよりも先に「聞く」そして「話す」というステップがあるのです。

これは英語だけではなく他の言語も同じであり、私たちもこのようにして日本語を習得したはずです。

まずは、英語習得には「読む」「書く」より先に「聞く」

その次に「話す」ステップがあることを覚えておいてください。

どの英語の教科書や参考書にも、最初にアルファベットの書き方と発音について書かれていると述べました。

ついつい軽く考えて飛ばしてしまいがちですが、英語の基本となるアルファベットの音については、発音の理解にもつながりますのできちんと学習しましょう。

アルファベットの「音」を学ぶ重要性

英語で使うアルファベットは26文字で、それぞれに大文字と小文字があります。
そして、この26文字はひとつひとつ、1文字だけでの発音があります。

例えば、最初の文字であるA(小文字はa)は、ローマ字読みでは「ア」ですが、英語では「エイ」と発音しますね。発音記号は[eɪ]です。
その他のアルファベットもそれぞれ、発音の仕方があり、発音記号があります。

以下にいくつかさまざまなアルファベットの発音とその発音記号を挙げてみます。

[例]

C c         「スィー」                      [siː]

H h        「エイチ」                      [eɪtʃ]

J j           「ジェイ」                      [dʒeɪ]

R r         「アー」                          [ɑːr]

W w      「ダブリュー」              [dʌ́b(ə)ljuː]

このアルファベットの発音記号の中には、後でご説明する母音や子音の発音も多数含まれています。
アルファベットの発音の仕方を学ぶことで、母音や子音の発音も学ぶことができますね。

そのため、英語を新たに学ぶ場合ついつい軽んじてしまいがちですが、アルファベットの音を学ぶことは実は大切なのです。

アルファベットの「音」を学ぶ方法

参考書のアルファベットを解説した章を読んで自分で発音練習することはできますが、正しい発音なのか不安ですよね。

オンラインやスマートフォンの英語辞書の発音ボタンを押せば生の音声が聞けるのはいいですが、勉強をしたというモティベーションが上がらない気もします。
おすすめは、歌に乗せてリズムとともに楽しく学べる動画がです。

以下は、たくさんある動画のごく一部ですが無料で利用できる動画を紹介します。

外国人の子供向けのアルファベット学習用動画です。
日本語での解説はありませんが、歌とともにリズムよく学びたい方におすすめです。

「Phonics Song with TWO Words – A For Apple – ABC Alphabet Songs with Sounds for Children」

日本人女性が日本語で解説してくれる、アルファベットの発音に関する動画です。

「大人のphonics。一目でわかるフォニックス表を作成しました。」

新しい外国語を学び始める際、学校の授業ではアルファベットや文字の発音などは、短時間ですぐに終わってしまいます。
しかし、次に勉強する母音や子音の発音にもつながる重要な事項です。

地味なトレーニングかもしれませんが、十分に習熟するまで続けてみましょう。

英語のスキルUPにはかかせない母音と子音!

アルファベットの「発音」の次は、母音と子音について見ていきましょう。

日本語の母音は「あ、い、う、え、お」の5つですが、英語の母音はというと諸説あるようですが、23もあると言われています。
そして英語は、息の使い方や舌の位置、唇の形などにより、数多くの母音を使い分けて発音しなくてはなりません。

先にご紹介した、クリス・ロンズデールによるTED講演は、人間の顔には43の筋肉があり、それらを連動させて音声を作り出すという内容でした。
そして、脳のウェルニッケ野とブローカ野のはたらきについてもご説明しましたが、人間は自分が過去に実際に発音した音以外の音は雑音として処理してしまい、聞き取ることができません。

だからこそ、母音、子音の発音を学び、実際に自分で発音してみることが大切です。
正しい発音で話せるこそ、ネイティブスピーカーにも自分が伝えたいことを正しく理解してもらえるでしょうし、ますます英語を学習するモティベーションも上がるでしょう。

また、ここでは詳しく紹介しませんが、ふたつの母音や子音が繋がる(リンキング)ことで、音が繋がって発音されるという現象も起こります。
その際に母音と子音に関する深い理解があると、非常に役に立ちます。

いくつか母音と子音の勉強に役立つ無料のサイトを紹介します。

ロンドン大学などで音声学修士号を取得している日本人が運営する、英語の発音・イントネーションを動画でわかりやすく解説しているサイト。
唇や舌の動きなどがよくわかるのでおすすめです。

Pronunciation-English.com
http://www.pronunciation-english.com/

日本語による表記の解説が入った、母音と子音の発音に関する動画です。

「【英語】日本人のためのフォニックス・トレーニング【子供用・大人用・反復練習】」

英語力向上のためには英語を声に出して読もう!

これまで、アルファベットの音、母音、子音について学んできました。
次に、このセクションでは「シャドーイング」という発音を練習する英語学習法を紹介します。

shadowという動詞の定義

「follow and observe closely and secretly」

(Oxford Dictionary of English)に由来する名称のこの学習法。

その名の通り、話し手の音声を、影のようにすぐ後を追って真似をして発音していくというトレーニングです。

声に出して読むこのシャドーイング、どうして英語学習に役立つのでしょうか。
脳のはたらきという観点から少しご説明します。

脳のウェルニッケ野とブローカ野のはたらきについて前述ごしましたが、大脳にはまた別の重要な部分があります。

前頭前野(ぜんとうぜんや)という部分です。

この前頭前野は、いわば脳の司令塔であり、思考やコミュニケーション、意思決定、行動や感情の抑制といった能力を司る部分です。
英語であれ日本語であれ、音読を行うことによって、この前頭前野を中心に脳のいろいろな場所が活性化されます。

人間は自分で声を出し、その声を耳で聞きますが、この際に脳が、言葉の意味や音の高さなどを計算したり調整したりします。
つまり、英語学習でも音読は有効な学習手段ということです。

そこで、シャドーイングがおすすめなのです。
一般的なシャドーイングの手順についてご紹介します。まず教材を選びます。

自分のリスニングレベルより少しだけ上のものが目安です。
加えて、興味を持てる内容の音声がいいでしょう。

1.音声のみを数回聴いて、内容を把握します。
この際に英文スクリプトは見ないようにします。

2.英文スクリプトを精読します。

発音やアクセント、語彙、文法、構文などを確認します。

3.英文スクリプトを見ながら、音声と同時に発音します。

オーバーラッピングといいます。

4.英文スクリプトを見ないで、音声を聴いて少し遅れて追いかけるように発音します。

これがシャドーイングです。

このシャドーイングによって、スピーキング力はもちろん、英語の音を習熟するためにリスニング力、そして発音力の向上も見込めます。
前頭前野を中心に、脳のいろいろな場所も活性化されますので、健康的なトレーニングでもありますね。

以下、オンラインでシャドーイングに利用できる動画サイト(英語字幕あり)を一部紹介します。

初級レベルから上級レベルのさまざまなジャンルの動画が、英語・日本語字幕付きで利用できるサイトです。
日本語の表記もあり、制約付きですが無料のサイトです。

EnglishCentral
http://ja.englishcentral.com/videos

アメリカ合衆国政府運営の「Voice of America」の英語学習サイトです。

VOA Learning English
http://learningenglish.voanews.com/

英語の基礎文法はやっぱり必要!

これまで見てきたように、「発音」は、外国語学習で最も重要な要素だと言えます。
言葉の音を理解する脳の仕組みについて先に説明しましたが、スピーキングとリスニングの上達にも密接に関係することだからです。

それでは次に、文法はどうなのでしょうか。
大学受験や資格試験の合格のために文法知識を詰め込むような英語学習は考えものですが、文法の知識も英語上達には必要不可欠なことです。

以下の簡単な例文を見てみましょう。

I got used to baking a cake.

さて、この英文はどういう意味でしょうか?
この人は、ケーキを焼くのだということはわかるでしょう。

used?使われる?
私はケーキを焼く材料にでも使われる…?とちょっと怖い考えになりそうです。

この「get used to」というのは3語連なると、それぞれの単語の意味からは異なる「〜に慣れる」という意味になる慣用語句、つまりイディオムなのです。
この3語が連なればこういう意味になると英文法で決まっているのです。

もちろん先ほどの英文は「私はケーキを焼くことに慣れた」という意味になりますね。
それでは、もうひとつだけ英文を見てみましょう。

“I had my purse stolen,”he said.

さて、この英文はどういう意味でしょう?
彼は財布を持っていた、と言っているようですね。

でもstolen=盗まれた財布?彼は誰かから盗んだ財布を持っていたということでしょうか。

それだと泥棒ということになりますね…。

この英文の正しい意味は…「財布を盗まれたよ」と彼は言った、となります。

このhad (have)というのは、この文脈では、「Have + A + B」「AをBの状態にされてしまう」という意味です。
ここでは詳しく説明しませんが、他にもこの「have」には、完了、使役といった用法もあります。

どんなに発音に習熟し、実際的な会話中心の英語学習をしていても、このような文法は知識として学ばなくては、先のような英文の意味はどうしても理解することはできないでしょう。

社会に法律があるように、言語の学習には文法があります。
何であれルールが存在しなければ秩序というものはなくなってしまい、正誤という概念があいまいになってしまいますよね。

ある程度、文法を勉強することはやはり必要なことであり、発音の勉強とともに行っていかなくてはなりません。
もちろん、文法上の間違いを恐れるあまり、発言しなくなってしまうということであれば、逆効果になってしまうので気を付けてください。

良質な英文の中で文法を覚えよう

文法はやはり必要だという事がわかったところで、英文法の勉強について考えてみましょう。
分厚い文法書を片っ端から読むことはあまりにつらいですし、長続きもしないでしょう。

英文法のドリルなどもたくさん出ていて、それをこなすことは効率的に学ぶことはできますが、ちょっと味気ない勉強になるかもしれませんね。

ここで一冊の参考書おすすめしたいと思います。

長らく駿台予備学校で英語講師を務めた、故・伊藤和夫先生による『新・基本英文700選』(駿台文庫)という参考書です。

受験英語のバイブル的存在として知られてきたこの本ですが、多くの文法、語彙を含んだ英語の多様な例文を700文収録しています。

左側のページには頭に番号がついた英文、そして右側のページには左の英文に対応する和訳が書かれています。
脚注に簡単な文法などの説明が書かれてはいますが、極めてシンプルな構成の参考書です。

しかし、不親切とも言えそうなこのシンプルさがこの参考書のカギなのです。
700それぞれの英文の中に、何らかの文法の要素が含まれています。

文の構造、品詞、時制、イディオムなど、一文一文どんな文法で成り立っているのか、自分で確認しなくてはなりません。
『新・基本英文700選』から、ひとつ英文を見てみましょう。

It cost me ten thousand yen to have my television set repaired.

この英文からは、3つのことが学べるのではないでしょうか。

まず「形式主語のit」というものがあります。

冒頭の「It」はあくまで形式的なもので置かれているだけであり、本当の主語は「to」以下となります。
そして「to」以下の部分です。

先ほど出てきた「have」という使役動詞を用いて、「have + A + B」「AをBの状態にしてもらう」という意味となります。
この英文で言うなら、テレビ(my television set)を修理(repaired)してもらった(have)となります。

最後にもうひとつ。「cost」という動詞の使い方を覚えることができますね。

「cost + A + B」「A(人)にB(金額・費用)がかかる」という意味でこういう順序になります。

この英文を解釈して学習すれば、少なくとも3つの文法に関する知識が学べるのです。
ぜひ暗唱してしまうことをおすすめします。

暗唱して少しでも多くの英文を自分の中に蓄積していくと、特に話す際や書く際に応用できるからです。
英語学習初心者であれば、最初はわからない難解な英文もたくさんあると思いますが、苦労して覚えた文法は、頭の中にしっかりと定着することでしょう。

『新・基本英文700選』については、一部では「英文の内容が時代に即していない、古くて役に立たない」「文法的な誤りがある」といった批判もあるようです。

そのため、この参考書に限ると言うつもりはありません。
例文集は他にもいろいろ出ています。

言いたいのは「自分の中に少しでも多くの文、言い回しを蓄積しておく」ことが大事だということです。

これができる文献や例文集などであれば、自分が使いやすいものを選ぶと良いでしょう。
以下に類似した例文集をご紹介しますので、ご参考になさってください。

[参考]
晴山陽一、クリストファー・ベルトン

『話したい人のための丸ごと覚える厳選英文100』

(ディスカヴァー・トゥエンティワン)

https://www.amazon.co.jp/dp/4799316249

英単語はイメージで覚えることが大切

ここからは英語学習の3要素の最後のひとつ「語彙」のお話をしていきます。

先のセクションで扱った良質な英文の中には、文法だけではなく、英単語やイディオムなども含まれます。
語彙を増やすのに、良質な英文を読むことはとても役に立ちます。

以下は、ある海外の新聞のウェブサイトに掲載された英文です。

この英文を利用して、英単語の勉強方法を見てみましょう。

(ハリウッド屈指の多才な俳優でアカデミー賞受賞者のフィリップ・シーモア・ホフマンが、日曜日、ニューヨークの自宅マンションで薬物の過剰摂取と思われる原因で死亡しているのが発見された。享年46歳。)
Academy Award-winning actor Philip Seymour Hoffman, one of the most versatile actors in Hollywood, was found dead of an apparent drug overdose inside his New York apartment on Sunday. He was 46.

単語を覚える際に大切なのは「イメージをつかむ」ということです。

単語にはそれぞれ「ニュアンス(意味などの微妙な違い)」というものがあり、それは文章や文脈の中で覚えてこそ、わかりやすくそして忘れないように習得できるものなのです。

まず、この英文の中でどうしても取り上げたいのは「versatile」という単語です。
『プログレッシブ英和中辞典』(小学館)で意味を確認してみます。

「versatile」には、以下のような意味があります。

versatile
[形容詞] [və́ːrsət(ə)l]

(1)(人・性格・才能が)
何にでも向く、多芸多才の、融通のきく。

(2)(道具・物が)
多用途の、万能の。

もしこの俳優の死に関する記事の英文を読み、記事の中に出てくる「versatile」という単語の意味がわからないとしたら、どうでしょう。
辞書を引けば、上記の定義を見て(1)の意味だということはわかります。

そして、単なる意味だけではなく、この英文の文脈でこのわからなかった英単語が、独特のイメージを伴って記憶に残るのではないでしょうか。

映画界きっての性格俳優・怪優で知られた、フィリップ・シーモア・ホフマン。
アカデミー賞を受賞した作家のトルーマン・カポーティ役、

その他にも善人から悪役まで幅広い役柄で観る者に強烈な印象を残した、不世出の役者。
その彼を形容しているのが「versatile」という英単語なのです。

その英文の文脈の中でこの単語「versatile」に出会うなら、そう簡単にはこの英単語が持つ独特のニュアンスは忘れられないはずです。
英単語を覚えるには、英文を読んでその文脈の中で覚えるということが、覚えやすい方法の1つです。

『必ず○○に出る英単語』といった類の英単語集が多数あります。

英単語とその意味のみが羅列されただけの英単語集で、英単語を単に暗記することはできるでしょう。
そうして試験に合格するといった目的も、達成はできるかもしれません。

ただそれでは、時間が経つと忘れてしまう可能性も高く、たとえ文字で暗記していても、その単語がもつ独特の「ニュアンス」を自分に沁み込むように覚えることは難しいです。
そして何よりも、英単語をひたする覚えるだけの味気ない学習で、外国語を学ぶ楽しみや真髄を心から味わうことはできないのではないでしょうか。

次にこの英文の中で「apparent」という英単語を取り上げてみましょう。
『ウィズダム英和辞典』(三省堂)をひいて意味を確認してみます。

「apparent」には、以下のような意味があります。

apparent
[形容詞] [əpǽr(ə)ntli]

(1) 明白な、明らかな、
見てわかる。

(2)(確証はないが)
外見上の、うわべの、見せかけの。

この「apparent」という形容詞、「clear」という意味の(1)の意味もありますが、この「apparent」という単語は(1)ではなく(2)の意味で使われる確率が圧倒的に高いと思います。

この見出しの新聞記事が出た段階では、部屋の中で薬物が発見されながらも、死因はまだ確定していませんでした。
そのため、「seemingly」という意味の「見たところ…らしい」という推測のニュアンスを含む(2)の定義が該当するのです。

このような実際に生きた英文の中で、文脈を考慮して、英単語やイディオムを学習すると、イメージと結びつけてそれらを覚えていくことができ、興味深く語彙を増やしていくことができます。

そうして培った語彙は、強く心に残り、簡単には忘れないものになります。
効率を重視して単語集をめくって英単語を覚えるのもひとつの方法かもしれません。

でもこうした文脈の中でイメージに結びつける学習の方が楽しくはありませんか?

英英辞典を使ってみよう!

ここでちょっと辞書の話をしましょう。
少し英語学習に慣れてきたというレベルになれば、英和辞書ではなく英英辞書を使うべきです。
英英辞典とは、英単語の意味を英語だけで定義してある辞書のことです。

もちろん、日本語はどこにも書いてありません。そのため、中・上級者の学習者向けの辞書とされています。
イギリスの新聞のニュースサイトから、2016年7月に発生したある自動車事故の記事の英文を見てみましょう。

(検死によると、自動車事故で死亡した疲れ切っていた医師は、長時間の三日間連続の夜勤の後、運転中に居眠りしてしまった可能性があるとのことだ。)
An exhausted doctor who was killed in a car crash may have fallen asleep at the wheel after working three long night shifts, an inquest heard.

この英文の「exhaust(ed)」という英単語を取り上げてみます。

33歳のこの医師は、三日間連続の夜勤の後に運転して帰宅する途中でした。
運転しながらハンズフリーで妻と話をし、その後おそらく居眠りをして、トラックに突っ込んでしまったのです。

もうただ疲れたなんてものではなく、気力もなく心身ともにぐったり疲れ切っていたという状態だったのでしょう。

ではこの「exhaust(ed)」を英英辞典で調べてみましょう。
今回は、Collins COBUILD Advanced Dictionary of American Englishを使用します。

exhaust
[動詞] [ɪɡˈzɔːst]

肉体的にあるいは精神的に、少しもエネルギーがないほどに疲れ切っているという意味です。
If something exhausts you, it makes you so tired, either physically or mentally,that you have no energy left.

疲れたという意味で私たちにおなじみなのは「tired」ですが、この「exhausted」というのは、程度がまた異なるレベルの疲労のニュアンスを含みます。

英英辞典でこの英単語を調べることによって、通常の英和辞典より強く印象を記憶に残すことができると思います。
英和辞典の定義は、英語のニュアンスを和訳して掲載したものに過ぎません。

英和辞典では、言葉の持つ概念を伝えるのに、ある程度の限界はあるでしょう。
可能であれば、英語が上達したら、英英辞典を使用することをおすすめします。

[参考]
定義に、2000語程度のなるべく平易な英単語が使われている定番の英英辞典です。

Longman Dictionary of Contemporary English Online
http://www.ldoceonline.com/

英語を覚えたらアウトプットして記憶に残そう!

これまで、英語学習ノウハウをいくつかご紹介してきました。

それでは、そういった学習により学んだ知識や感想などを、さまざまな方法でアウトプットしてみましょう。
人間の脳は、情報を取り入れる(インプット)よりも繰り返し想起して使う(アウトプット)方が、長く情報を保存することができるそうです。

アウトプットをするといつまでも忘れないということですね。
アウトプットの例を挙げると、SNSやブログで何か短い記事を英語で書いて情報を発信する、英語で今日の出来事を家族や友人に話してみる、などがあります。

自分だけしか見ない日記を英語で書くというものもありますが、やはり見てくれる相手がいた方が緊張感もある分、効果は上でしょう。
英語を話すレベルが上がれば、いわゆるビブリオバトルの形式で、自分が読んで面白いと思った本について、5分間程度で友人に紹介するといったアウトプットの仕方もあります。

アウトプットすれば書籍のポイントも記憶にも残りやすくなりますし、短くポイントをまとめる練習、さらに英語を話す練習にもなります。

英語レベルが低い日本人の根本の原因

日本人が英語をなかなか話せるようにならない根本の原因は、どこにあるのでしょうか。
学校の英語教育が知識偏重で会話を教えないから、話して間違うと恥ずかしいと思ってしまうから、謙虚を美徳とする国民性だから、英語を使う機会が少ない国に住んでいるから、日本語と英語が体系からしてあまりに異なるから、そもそも日本語でも自分の意見を言えない雰囲気があるから…

なぜ日本人は英語を話せるようにならないのか。
私たちはよくこんな理由を耳にします。

このようにもっともらしい原因はたくさんありますし、このどれもが正しいのかもしれません。

次のセクションでは、この原因について少し異なる視点で考えてみます。

本気で英語を覚えたいならきちんと英語学習の動機づけをしよう!

今回、英語学習の3要素
「発音」「文法」「語彙」という点から、さまざまな勉強法をご紹介しました。
さてこの中に、ラクにできる勉強法はありましたか。

どちらかというと、地味で、気が遠くなりそうな学習やトレーニングだと思ったのではないでしょうか。

では、どうして私たちは英語を勉強しよう、したいと思い、その学習を続けているのでしょうか。

そして、時としてどうして続けることができなくなってしまうのでしょうか。
ここで、人間の「理性」と「感情」、そして「動機付け」の話をしたいと思います。

もし英語ができたら、あなたにはどんなメリットがあるのでしょう。夢でもいいです。
英語で世界中にあふれている膨大な情報を得られるようになりたい、勤務している会社で出世して収入を上げたい、外国人の恋人をつくってみたい、海外で暮らして世界を舞台に活躍してみたい、どれもちょっと大げさだと思えるほどですが、英語ができるがゆえのメリットです。

英語ができたらいいこと尽くめという感じですね。
この英語ができたらいいなあというメリットが、その人の英語学習のモティベーションになります。

行動経済学という学問で扱われる理論ですが、人間は一般的に「理性」ではなく「感情」で動く生き物だということです。
先ほど、英語ができたら自分にはこんなメリットや夢があるということを想像してもらいました。
でも、こんなに大きなメリットや夢があるとわかっているにもかかわらず、私たちは英語学習に挫折してしまったり、なかなか上達しなかったりします。

それはどうしてでしょうか?

理由はひとつ。

「感情」への動機付けが足りていないためです。
私たちの「理性」は、英語を学ぼうとするにあたってしっかりと計画を立てて、進まなくてはならない方向へと正しく導こうとします。

一方私たちの「感情」は、論理的に筋道を立ててその通りに動くというものではなく、時に猛威をふるって正しい道とは外れた方向へと暴走します。
「理性」の方が、優れているように思えます。ですが「理性」には、激しい力はありません。

「理性」がどんなに論理的な計画を立て建てたとしても「感情」がものすごい力で暴れ出せば、「理性」は完全に振り回されて、地道な努力も水の泡になることもあります。
地道に英語の学習を続けることはもちろん大切です。

ただ、私たちの「理性」がどんなに計画通りにまじめに英語の勉強を続けていったとしても、英語ができたらいかにメリットや夢に恵まれるかといった「動機付け」を「感情」に強く訴求してやらないと、「理性」が「感情」に負けてしまい、ついスマホをいじり出したり、SNSで遊び始めたりということになるでしょう。
この「理性」と「感情」のバランスをうまくとり、学習する「動機付け」を「感情」に強く訴えるということが大切なのです。

つまり、英語が話せたらどんなにいいことがあるだろう、と常に強く思い描くことが重要です。

英語の本当の楽しさとは?

新しいことを始めるのは、たいていの場合、楽しいものです。
私たちも初めて英語の勉強を始めた時、多くの日本人にとっては、幼少の頃あるいは中学生の頃、いかがでしたか?

きっと新しいものに触れる喜びや好奇心で、少しでも英語学習が楽しいものに思えていたのではないでしょうか。
それなのに、多くの日本人は、大学受験や社会人になってからの検定試験に合格するために、と勉強する目的が変わってしまい、点数を取るための勉強へと向かうことになります。

受験などで英語の偏差値が高いと思っていても、英語圏に住んだり旅行したり、インターネットの時代が到来して海外に住む人たちと英語でメールをやり取りしたり、海外の英語で書かれたウェブサイトを閲覧したりするソーシャルメディアの時代が到来し、日本人の英語レベルの低さを自分で実感するようになります。
英語の勉強を始めてから数十数年も経って、今ようやく、こう思えるのです。

たとえ受験英語の勉強であっても、あの時に粘り強く地道に英語の勉強を続ければ良かったと。
逆に地道に英語学習を頑張ってきた人たちは、頑張ってきてよかったと異文化への扉を開くことになるでしょう。

まとめ

今回は、「発音」「文法」「語彙」という語学学習の主要な3要素の学習方法についてご紹介してきました。

世の中には、効率を重視した英語学習のための参考書がたくさんあふれています。

ですが、外国語の習得というのは、時には何かを棄てるくらいの地道な努力と覚悟がなくては成し遂げられないのではないかと思います。
しかし、モティベーションがなければ長続きはしません。

今回紹介した、文章から文法、単語、イディオムを学習し、アウトプットする方法は有効ですので、少しでも楽しく継続的にできるような自分にあった参考書を見つけてください。

ここで学習の本質を言い表したアルベルト・アインシュタインによる言葉を紹介します。

(知れば知るほど、自分の無知に気が付くものである。
The more I learn, the more I realize I don’t know.

自分の無知に気が付くほど、もっと多くのことを学びたくなるのだ。)
The more I realize I don’t know, the more I want to learn.

外国語の学習には、終わりはありません。

あなたがここで紹介した英語の学習法のひとつでも実践して、十分に習熟したと思ってもさらに学び続けて、英語というツールで人生を楽しく充実したものにされることを心から願っています。

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